2007年 10月 09日
【本】SSで紹介する本:ヘッセ『クヌルプ』
テクスチャの端っこで咲く花々に
心を癒された
蘭です。こんにちは。
最近読んだ本をSSを交えて引用してみます。
僕はこの穏やかな僕の暮らしに満足している。
きみはどう?
きみはちゃんときみとして生きてる?
本文引用はヘッセ『クヌルプ』より
心を癒された
蘭です。こんにちは。
最近読んだ本をSSを交えて引用してみます。
クヌルプは手近の十字架にしるされている名を読んで言った。
「エンゲルベルト・アウアーという名で、六十歳を越した。そのかわり、今じゃモクセイソウの下に眠り、安穏だ。モクセイソウは美しい花で、ぼくもいつかはほしいと思っている。さしずめここにあるのを一つ取ってゆこう」
クヌルプは言った。
「人間はめいめい自分の魂を持っている。それをほかの魂とまぜることはできない。ふたりの人間は寄りあい、互いに話しあい、寄り添いあっていることはできる。しかし、彼らの魂は花のようにそれぞれその場所に根をおろしている。どの魂もほかの魂のところに行くことはできない。行くのは根から離れなければならない。それこそできない相談だ。花は互いにいっしょになりたいから、においと種を送り出す。しかし、種がしかるべき所に行くようにするために、花は何をすることもできない。それは風のすることだ。風は好きなように、好きなところに、こちらに吹き、あちらに吹きする」
「きみが言うような天分は、そうたいしたものじゃない。ぼくは少しばかり口笛が吹け、アコーディオンも鳴らせる。ときには短い詩も作る。昔はなかなかよく走ったし、踊りもまずくはなかった。それだけのことだ。だが、それをぼくひとりで楽しんだわけじゃない。たいていの場合、仲間か、若い娘か、子どもが居合わせて、それをおもしろがってくれ、ぼくによくお礼を言ったものだ。それでいいことにしよう。それで満足しよう」
僕はこの穏やかな僕の暮らしに満足している。
きみはどう?
きみはちゃんときみとして生きてる?
本文引用はヘッセ『クヌルプ』より
by rankaran
| 2007-10-09 00:00
| 本